地図が“考える”時代へ:エージェンティックAIが切り拓くモビリティと物流の進化
Louis Boroditsky — 20 November 2025
1 読書時間
17 November 2025

「自分たちがSDVへの移行プロセスのどこにいるのかを把握していなければ、戦略を描くことは難しいです」と、OmdiaのBezerra氏は述べます。「このフレームワークは、業界全体に共通言語を与えるものなのです」
Bezerra氏は、自動車業界の大変革の本質をこう語ります。
SDVとは、機能追加ではなく、クルマの設計・製造・体験を根本から変えることだ、と。
業界全体でSDVに関する議論は進んでいるものの、企業ごとに用語や定義が異なり、サイロ化した状態が続いています。こうした混乱を整理するためHERE Technologiesは2025年7月にOmdiaと協力し、リサーチイニシアチブを立ち上げました。
目標は、業界全体がSDVについて同じ言葉で語れるようにするための、中立的で共有可能なフレームワークを構築することです。
HEREとOmdiaは、米国、中国、ドイツなど8カ国の自動車メーカー、サプライヤー、エコシステムパートナーの専門家647名を対象に調査を行い、業界が現状を把握し、自信を持って前進するための実践的なガイドを作成しました。

The SDV Maturity Framework consists of four phases that evolve in capability, maturity and sophistication: connected, augmented, adaptive, and agentic.
クルマとコードの交差点
SDVへの移行は、固定電話からスマートフォンへの飛躍に例えられることがよくあります。当初は、そのメリットが分かりにくいものでした。Bezerra氏も「当時は何度も『どこがスマートなの?本当に何の役に立つの?』と自問していました」と振り返っています。
いま、クルマも同じような転換点を迎えています。業界としてはSDVへの移行が避けられないことを理解している一方で、自動車メーカーとドライバーの双方にとって本当の価値がどこにあるのか、まだ模索している状況です。
HEREとOmdiaが提唱するSDV成熟度フレームワークは、SDVの進化を「Connected」「Augmented」「Adaptive」「Agentic」という4つのフェーズに分けて整理しています。各フェーズは、必要となる技術、組織の準備度、顧客にもたらす価値、そしてビジネスモデルによって特徴づけられています。
このフレームワークを使うことで、自動車メーカーとそのパートナーは、現在の進捗を把握し、次に何をすべきかを明確に示すロードマップを得ることができます。フレームワークは、単にインターネットに接続されている段階のフェーズ1(Connected)から、車両がニーズを先回りし、オーナーに代わって行動する知的なパーソナルアシスタントとして機能するフェーズ4(Agentic)までの進化の道筋を示しています。
スムーズにつながる未来
すべてのSDVフェーズに共通して重要になるのが、車両全体のドメインを統合する単一の地図を構築することです。今回の調査では、「Adaptive」フェーズが最も重要な転換点として浮かび上がり、全体の36%で最重要とされています。続いて「Agentic」フェーズが31%、「Augmented」フェーズが22%となりました。
「Connected」フェーズは最も重要度が低く(11%)見られていますが、Bezerra氏はこう説明します。
「デバイスが賢くなるのは、位置情報によって“状況”が分かるようになるからです」
HEREは自動車メーカーと協力し、よりスマートで“コネクテッドな車”への移行を加速しています。私たちは、インフォテインメントから先進運転支援システム(ADAS)までを途切れなく支える、統合されたひとつの地図を提供し、個別システムが生む複雑さを取り除きます。統一された位置情報データにアクセスできることで、自動車メーカーは最初の段階から、よりスムーズで信頼性の高いユーザー体験を提供できます。
HEREは、ソフトウェア定義車(SDV)の開発を加速するために、強固なパートナーエコシステムを構築してきました。その一例が、AWSと共同開発した新しいクラウドベースの「SDV Accelerator」です。これは、自動車メーカー向けに、実践的なガイダンス、すぐに使えるコード、そして車両向けに最適化された包括的なソフトウェアアーキテクチャを提供します。
最終的には、「SDV」という言葉そのものが消えていくことが理想です。
Bezerra氏はこう述べています。
「完ぺきなソフトウェア定義車は“見えない存在”になるはずです。クルマはあくまでクルマとして自然に動作し、ドライバーはただ、安全性、快適性、利便性の向上だけを感じることになるでしょう」
こうした顧客体験への集中こそが、新しい自動車イノベーション時代における真の成功指標となります。

Louis Boroditsky
Managing Editor, HERE360
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